省エネQ1住宅は、北海道で誕生しました。
北海道の高断熱住宅の標準となる北方型住宅(次世代省エネ基準を満たす住宅でQ値が1.6W/m2以下)は、北海道の一般的な、ストーブで部分暖房をする住宅に比べ、約2/3の灯油消費で全室暖房が可能になります。
また本州の次世代省エネ住宅が、一般住宅に比べて、全室暖房をすると2倍の暖房エネルギーを消費するのに対し、はるかに厳しい基準です。この北海道の高断熱住宅の暖房エネルギーを、さらに半分 以下にしようとすると、地域によって差はありますが、おおむねQ値=1.0前後になることから、Q1.0(キューワン)住宅と名づけました。
断熱性能を高めるには、どこに重点を置けばよいか、日射をどのようにコントロールするか。理論的に、そして経済的な手法を採用していく。これがQ1.0(キューワン)住宅の設計の基本です。
暖房エネルギー計算
寒い部屋で布団にくるまって寝るとやがて暖かくなります。布団から逃げる熱と、人間が出す熱がバランスしているのです。布団が薄いと逃げる熱のほうが多く、寒いので電気毛布などの暖房器を布団の中に入れて熱を補ったりします。逆に、部屋がそんなに寒くないと、厚い布団では暑くなってしまいます。住宅の暖房もこれと同じです。
布団は住宅の断熱材であり、布団の中の空間は住宅の室内空間です。住宅の中で人間は熱を放出していますが、布団の中に比べて住宅空間は広いので、断熱材をかなり厚くしても、それだけでは足りず暖房する必要があります。布団の中と大きく違う点は、住宅には窓があり、太陽熱が入ってくることです。
また、住宅内で生活する我々は電気器具やガス器具を使い、それによって熱が放出されます。右図は、そうした住宅の熱収支を示しています。
木は鉄より軽くて強い
開口部・外壁・換気の熱損失を削減する
日本の省エネ基準はこの20年以上全く変わっていません。
義務化が提唱されましたが結局見送られました。この遅れた省エネ基準住宅の熱損失Qを部位別に示したのが上のグラフです。見なし仕様と呼ばれる各部位熱性能の最低基準で、120㎡のモデルプランで計算しました。
このQを小さくするためにはどうするか。グラフを見れば一目瞭然です。4~7地域の開口部の熱損失の大きさが際立っています。その他の地域でも開口部は大きく、そして外壁、換気の順です。これらの部位の熱損失を削減する必要があるのです。
ガラスを賢く選ぶ
空気層16mmにアルゴンガスを封入したペアまたはトリプルガラスが標準です。これを断熱サッシにはめ込んで採用すると、上記の省エネ基準住宅で暖房費が、 8%〜40%位削減されます。
ガラスの性能で熱損失を小さくするほかに、日射熱の透過率の高いガラスを採用することも、日射を大きくする意味で重要です。陽当たりの良い南の窓にはガラス面積の比率の高い大きな窓を設けることも重要なポイントです。
210mm断熱外壁の威力
暖房エネルギーを削減するためには、壁一杯の105mm断熱では全く足りず、さらに105mmを外に付加する210mm断熱工法が開発されました。
右記の見なし仕様モデルに、この外壁工法を適用すると、床天井の断熱材を少し増やして、20%以上の暖房費が削減できます。ある地域では元々が厚いので13%程度ですが、これ以上の性能の外壁も開発されています。この付加断熱工法をローコストに実現することを可能にしています。
熱交換換気は掃除を楽に
Q換気を小さくするには、熱交換換気を採用します。換気のために排気する暖かい空気と、外から取り込む冷たい新鮮な空気との間で熱と水蒸気を移動させ、回収するのです。
この設備を使うに当たっては、フィルターの定期的な清掃が必要です。この清掃を容易に行える壁掛形の機器をメーカーに働きかけ、開発しました。